新宿で飲む

 今週末のトレーニングのために、新宿の石井スポーツに燃料を調達に行く。4階を訪ねると、店員として働いている今年の春にシシャパンマの南西壁から北側へ縦走したT君や、チョモランマを無酸素で登頂したK君の元気そうな顔に会うことができた。二人とも、さすがにいい顔をしている。とくに、目がいい。ううん、うらやましい。質問したいことが山ほどあって、立ち話をしているうちに、自分が何をしに来たのか忘れてしまうほどだった。昔懐かしい、早稲田大学山岳部OBのNさんにも10数年振りにお会いして、「今日は丁度みんなで飲みに行く予定だから、一緒に行こう」と誘われる。家でやらねばならないことが山積みだったので、少し迷ったが、こんな旬な人たちのエネルギーを感じられる機会はそうはないと思いなおし、参加することに。
 閉店時間の8時半から、南口近くの『鳥茂』へ。昔からずっと気になっていた店で、美味しいと聞いていたので、うれしい。ほかにMさん、Kさん、Aさん、Aさんの彼女と集まる。予約を入れているというのに、店は満杯で、15分後くらいにやっと座ることができた。
 まずは、ビールで乾杯。店によく来るというT君が、「おまかせの『じょう』をお願いします。」と注文してくれる。『じょう』とは、常連の常のことで、メニューにはないらしい。これがすばらしく美味しかった。鳥レバーの表面だけを炙った串や、ピーマンの肉詰め、鳥の刺身、つけもの、ユッケのように牛の生を味付けしてご飯にちょっと乗せたもの、しめは出汁のきいたぞうすい。どれも、美味。おまけに、話しが面白く、すごい登攀をやってきたばかりだったり、日頃から厳しいトレーニングを積んでいるコアな人たちとは思えないほど、フラットでオープンなエネルギーに、どんどん酒が進んでしまう。元気になった。
 私の今年の山の話しをすると、楽しそうだねえ、と面白がられる。なにより、遠征費用が安い、と驚かれてしまった。そりゃそうだろう、今年のみんなは何百万も使って命をかけて山に登ってきたのだから。深夜近くになってお開き。8月に私が帰ってきたら、また、みんなで飲むから、と約束してくれた。うん、また美味しい酒を飲みに、みんなに会いたいなあ、と思う。そのためには、いい時間を過してこようと勇気づけられる気分になる。