雨具とヘッドランプ

 会社の女性の先輩は、今年の夏休み、一人で利尻岳に遠征するそうだ。会社には、女性の社員が私を含めて7人いるのだけれど、そのうち2人は、以前山を登っていた人たち。二人とも昔は、かなり登り込んでいて、利尻に行く先輩は、学生時代にカナダの山へ遠征したこともあったという。
 3年前に私が会社を長期に休んでチョー・オユー峰に登りに行って帰ってきたときに、休んで迷惑をかけたというのに、その先輩は登頂をとても喜んでくれた。そして、「私も刺激を受けて、再び山を登りはじめようと思っている」と言ってくれた。それからは、ときどき、近郊の山にダンナ様を誘って行かれた話や、一人で登った話しを聞いていた。
 今年は、数年前から花を見たいと気になっていた、利尻岳に行く決心をしたという。それも、一人で。1日の行程は10時間近くになるらしい。そのために、2週間前から、エレベーターを使わずに階段の登り下りをしているといっていた。なんだか、私にとって、いい刺激だった。
 雨具とヘッドランプを新調したいので、どこのお店がいいか教えて欲しいといわれた。知っているお店をいくつか伝える。もしも、新調する楽しみを求めなければ、私の使っていない雨具を差し上げますというと、ぜひ、ということになった。
 雨具とヘッドランプが、丁度余っていたので、差し上げることにした。というよりも、一人で、利尻岳まで遠征しようという気持ちになんだか、打たれるものがあった。未知の場所へ行く不安や、準備を想像すると、まさに遠征だと思った。だから、ぜひ、私の装備を使って欲しかった。そして、良い山行でありますように、と祈りたい気持ちになった。