Suspicious…スペインの癒し事情

 どこにいっても、すばらしく魅力的なキャラクターの人というのはいるけれど、今回の隊で甲乙つけがたい中、私の中で一番をつけるとしたら、やっぱりスペイン3人組の一人、30才のアルハンドロだ。軒並み身長が180とか190センチくらいある隊員の中で、彼は恐らく170センチ弱くらい、私の次に小さくて、だけれども、すばしっこくて頭の回転が速い。小学校とか中学校のクラスにこんな子がいたよな、と懐かしくなるようなかわいさを未だに持ちつづけているようなヤツである。心はいつも繊細でオープンで優しいけれど、同時に、真っ当な懐疑心があるところが、なんとも魅力的なのだ。

 彼はベースキャンプでのレストの日になると「まさみ〜、何か、エネルギーもの(Energy Thing)教えてよ〜」と言って遊びに来る。「んじゃ、今日は、太極拳のエネルギー循環運動を教えてあげるよ」とか言いつつ、あやしいポーズをしたりして遊んでいたのだが、これは、私たちにとってはかなり笑いのツボにはまるアソビだった。
 「最近はスペインでもヨガや太極拳が流行ったりしてて、あやしい」と彼はアクションもオーバーに、スナフキンばりの疑いの目で言う。「僕の友達(スペイン人)も、急に東洋系のモノにはまったヤツがいてさ。昨日まで大麻を吸ったりしてヒッピー系だったのに、ある日突然、シアツ(指圧)やらタイチー(太極拳)やらやりだして、マスターになっちゃったんだよ。そのうち、教室を持ったから来いと言われて一度だけ行ったことがあるんだけど…」私は、いわゆる東洋系の怪しいモノが大好きなので、こういう話題は大歓迎。「でも、おかしくって、ついていけないんだよね〜。まあ、インド人や東洋人がやる分には、なんとなく不思議な感じでいいと思うんだけど、同じスペイン人じゃ、ホントに効果があるの?って、信じられなくって笑っちゃうんだよ…」なるほど、そうかもね、と、私は逆に目からウロコだった。日本では今、ヨガ教室で白人系の外国人が教えているところは結構ある。逆に、日本人より、外国の先生に習った方が有り難いイメージすらあると思うのだ。中でもヨガは世界的なブームだというし、そんな流れの中で、アルハンドロみたいな疑いの目を向けている人っていうのは、案外少ないかもナ、と思うのだ。これだけではなく、彼は、何に対しても、怪しさを見破るようなところがあって(他にも逸話はあるけれど、ここに書けないのが残念…)、私には、それらがなんだかとっても真っ当な疑いの心といったように思えて新鮮だった。

 そうはいっても、彼も内心はエネルギーモノには興味があるようで、下山後カシュガルに着いて真っ先に「指圧を受けに行きたい!」と言い出したのは彼だったのだけど。